[ファンタジー] 魔王を倒そう、パーティーメンバーが執着する - 009_身分上昇が行われる寝床(2)

***

"ふ-。"


 やっぱり簡単じゃないな。


勇者様が泊まっている部屋から出てきて内心嘆くが、そう簡単に成就するとは思っていなかった。

やっと顔向けができたところだ。

短い時間ではあるが、勇者様の侍女に任命された以上、チャンスは残っていた。


 あるはずなのに..........


いくら魔王軍に国が大きな打撃を受けたとしても、勇者様の御座は惜しまない。

言い換えれば、今日勇者様と情を交わさないと次を狙うのは難しいということ。

専用侍女1人に補助侍女1人を1組とし、3交代で勇者様を補助する。

そんな体制を4回回って、勇者様の専属従者職が4日に1回。

午前と午後なら周囲の視線が気になるが、夜明け担当の今なら勇者様と心を通わせるには絶好の機会だった。


 しかし、ここまで冷たく突き放されるなんて、私はそんなに魅力がないのだろうか？


そう思うのも無理はないのだが、勇者様の噂を聞くと、既婚者であるため、女性との関係にはしっかりと線引きをしているそうだ。 その証拠に、国王陛下があれほど可愛がって育てた姫様にも勧められたが、一貫して断っていることは、従者たちの間では有名だった。


 魔王も倒したし、勇者様がある日突然旅立ってしまうのも他人事ではないのだから。 結局、今日こそ、我が家を復興させながら、勇者様と情を分かち合える絶好の機会なのだが..........。


何度も現実を思い出すと焦る気持ち。実際にも余裕がないので、今すぐ計画を実行しなければ二度と来ない機会だ。


 鐘の音が聞こえたから入ってみようか？ それなら寝てるなら...勇者様なら睡眠薬も飲まないだろうけど、せっかく助かったんだからやってみるか。


助侍女であり自分の使用人に持ってこいと言われたので、勇者様の伝令を完遂して戻ったら、すぐに実行するために覚悟を決めた。

さっき、寝ている間に精を飲もうとは思っていたけれど。

実際、勇者様ほどの方が眠りに近づくのをご存じないはずもなく、起きている状態で誘惑した方が安全だというのが、最終的に使用人と相談した上で決定した内容だった。


"お嬢様。行ってきました。"

"シッ...シッ...。"

"あ...ごめんなさい。"

"わかりましたので、声を小さくしていただけますか。"

"...はい。"


まさか考えも読めないだろうが、それでも大陸屈指の強者である。すでに身分を知らせた以上、令嬢であることが耳に入ったら追い出されるのは目に見えていた。

そのため、睡眠薬よりも誘惑に重点を置きたかったのだが、思うようにうまくいかない計画。

ましてや、王家の侍女は貴族家の令嬢でも可能で、本当に下賤な身分の自分の使用人を騙して連れてきたことがバレたら、追い出されるだけでは済まされない。

それでもこのような無謀なことをするのは、せいぜい自分が男爵家の女中に過ぎず、身分を急上昇させるにはこれが最も確実な方法だからだ。

元々下女たちも主人によく使う方法でもあった。

その事実を勇者様がご存じないとは思わなかったが、人間の欲望は時に単純で素直なものだから、よくあることだが、それでも通用するものだと、自信を持って自分に言い聞かせた。


 勇者様も結局は男だ。 その身分ゆえに誘惑しても皆が遠慮しただけで、大胆に攻めれば、勇者様の情を得ることも不可能ではないはずだ。 そうすれば、我が家は大いに興隆するだろう。 順番は姫様が先にすることになったが、いつまでそれを我慢して待つのか。それに、アタシが先に精を取り、他は失敗する？ そうすれば、すでに勇者様の子を産んだアタシを守れば、守ったから手出しできないわよ。 それに、勇者様なら責任感からか、旅立つまでアタシを守ってくれるかもしれないし......ふふっ。


彡(ﾟ)(ﾟ)(ﾟ)(ﾟ)彡


何度も自分に言い聞かせながら、ドアをコツコツと叩く。


"勇者様。おっしゃっていたこと、すべてお伝えしてきましたよ。"


本来は返事を聞くまでドアを開けてはいけないのだが、身分の低さを強調するために、教育を受けていない態度を露わにした。

同時に、やや強引に押し付けるために、こういう性格であることをさりげなく知らせるためでもあった。


"そうですか？お疲れ様でした、ありがとうございました。"


 いやはや、国王陛下ですら敬語を使われる方が、たった一人の侍女にこんなに親切なんですね。


あらかじめ用意した車輪付きトレイを引っ張って入ってすぐ確認した勇者様の印象は実に男らしく、女性なら惚れ惚れしないわけがない。


"あの、勇者さん、もしよろしければ、お茶でもいかがですか？"


誘いながらも、実は良心の呵責に襲われ、もしかしたら声が震えてしまうかもしれないと不安になった。


"お茶...いいですね、置いていってください。"


幸いお茶を勧めることには成功したものの、肝心のそばにいることには失敗したようです。


"まさか！ こんな簡単なお仕度すら勇者様に差し上げられなければ、私は他の召使いに笑われちゃいますよ！ ですから、どうか、勇者様のそばでお茶を淹れる栄誉を私に下さってはいかがでしょうか？"


勇者様が負担に感じていることは重々承知しているにも関わらず、恥ずかしそうに。


"あ、うーん。じゃあ、まあ。わかりました。"

"はい...！このような卑しい私に勇者様のお仕えをさせていただき、ありがとうございます！ こんな感激の瞬間を代々受け継ぎ、記録に残します！。"

"なんだ、こんなので代々受け継ぐなんて。"


男性的な印象とは裏腹に、女性に対してかなり弱気な姿に好感が高まります。

ただ、勇者様の精を奪おうとする計画とは別に。


 どうせ勇者様の精を宿すことになれば、代々勇者の子を宿した母として崇拝されるだろうが。


まだ戦争の痕跡が蔓延する国だが、終戦を目前に控え、修復されつつある中で勇者様の子を育てれば、きっと我が家の再興も夢ではないだろう。

同じ男爵家の三男や四男の政略の相手として使われるよりも、はるかに良い待遇を受けられるだろうという期待に、興奮をようやく抑えることができた。


'ゴソゴソ'


マグカップに睡眠薬入りのお茶を注ぎながら、平気な顔で淡々と。

ひょっとしたら自分に勧めるかもしれないので、グラスも1つだけ用意した。


"あ、ありがとうございます。"


そう言ってトレイを勇者に近づけ、飲みやすいように。

熱がじんわりと立ち上る茶碗をフフッと吹くことなく飲み干すので、熱くはないだろうかと心配になる。


"私、すごいですね。"

"え？"


お茶ごとに温度に敏感に反応し、それを楽しむ貴族も何人かは、あれこれと悩むのに苦労したという話を使用人から聞いた記憶があった。

しかし、自分自身が偉いと思ったのは、このようなくだらない言葉で勇者様との会話の糸口を掴んだからだ。

本来であれば、令嬢自身に男性が先にどのような会話をするか選ぶのを見守る立場なのに、逆に自分に興味のない男性にこれほど勇気を出して興味を持っていることを表現するのは、実に不思議な気分だ。


"えっと、他の貴族は冷やしながら飲むのが普通なんですが、勇者様はさりげなく飲まれるんです。"


しかし、何度も何度も叩いても、わざと避けながら気づこうとしないから、苛立ちながらもあんなに毅然とした変化球のような男の情を成し遂げられたら、この世のどんな女よりも偉い女になるんだろうなと思った。


"ハハハ、まあ、かなりの攻撃には耐えられる体だからね。"


肩をすくめながら答えてくれる勇者様。


"本当にすごいですねー。私では想像もできないようなことを経験しているからでしょうね。"


相手を絶賛しつつも、気まずくならないように。賞賛が当たり前のように聞こえないように。

音もなく手を合わせ、自然に驚きの表情と身振り手振りで勇者様の注意を引く。侍女長に教わった男の扱い方を工夫するのだが、些細なことでも褒めたり、すごいと誉めたりすることだった。

それを勇者様に使おうとしたからには、おままごとみたいな遊びのつもりで、今俺を弄んでいるのか？ と思わせるような無礼を犯しているのではと思ったが、自分はすでに睡眠薬という、とんでもないがんじがらめを犯してしまったので、逃げるという選択肢はなかった。


 勇者様が睡眠薬入りのお茶を飲んだ瞬間から、俺には前進しかない。


"だからか、勇者様のお話がとても気になりますよね？ 私が唯一推測できるのは、勇者様の戦勝報告や吟遊詩人の歌、語り部の口上を借りた武勇伝に過ぎないんです。 でも、私の目の前にその憧れの勇者様が実在するのですから、失礼でなければ、勇者様のお話を勇者様の口から直接聞きたいんです。"


少し冷静に考えればバレバレの手口ですが、卑しい身分を装いつつも
私は素朴なので、そんなつもりで近づいたわけではありません。
 というような素振りを見せる。

そこに説得力のあるストーリーは、嬉々としてわざわざ嘘をつく必要のない、真実が込められた経験をもとに引き伸ばすことで距離を置くこともなく。

とりあえず大事なのは、崇拝しつつも、媚び過ぎないようにすることだった。


"うーん、確かに私の話が他の人の口から出てくると、ちょっとやりすぎちゃいますね。"


主に聞き役の立場だったが、だからといって口下手なわけでもなく、勇者様の興味を惹きつけて思わず歓喜の声を上げそうになった。


"私が自分の話をすると言っても、何から話せばいいのか...."


積極的な態度で耳を傾けると言いながら、遠くもなく近くもないくらいの距離で近づく。

しかし、話のネタが多いのも問題だ。

いざ席を設けると、話の当事者が準備ができていないという困った状況。このままでは時間がないことを言い訳に、次を約束して私を噛まれたら困るので、急いで別の方法を模索した。


"あの、じゃあ、勇者様が住んでいたところってどんなところなのか...聞かせてもらえますか？"


下賤の身分の長所は、自分が学んでいないという背景を相手に知らせ、それが失礼かどうかわからないように振る舞う巧妙さにあった。

たとえおとなしい相手にしか通用しない方法だったとしても、純真無垢の仮面をかぶって平然と犯せば、相手は故意ではなく、知らなかったんだなあとスルーしてくれるから。

そのうちバレたら、相手の善意を利用されたという怒りに憤りを感じるかもしれないが、その分、自分がこういうことをしているのは本気だとわかってほしいという欲求もないわけではない。

正直なところ、このような行為をしているのだから、私と同じような境遇の者であれば、誰がこんなことをしないだろうか。


"私が、住んでいた場所だから...."


勇者様がここに召喚されてから、なんと3年という時間が経ったと聞いた。

故郷を懐かしむには十分な期間である。

滞在期間が長くなり、故郷に帰省できずに働き続けていた使用人が家族のことを思い出し、口数が多くなることがたびたびあった。

苦労を重ねたベテランでも、ムスクがないわけがないだろう。


"ここと比べれば文化的にはかなり発展していますが、階級社会ではなく、目に見えない階級で人によって格差が激しいところでもあります。 この世界では実際に奴隷がいて物扱いされているので、どちらが悪いとは言い難いのですが、違いがあるとすれば、民主主義があることでしょうか。"

"民主主義？"

"はい。王も市民も結局は一人の人間として皆が平等である、みたいな感じですね。"

"ピルオラなんてこった...そんな世界が、存在するんですね。"


どうにか無難に話が進み、半分は成功した状態。正直成功の確信が持てなかった計画が順調に進むにつれ、不安だった審査が叶うかもしれないという興奮に変わっていった。


 このまま勇者様が眠りにつくのを待って、本当に眠りについたら....。


うわーーーーっ!


 あまり心配しなくていいわね。眠っている男を相手にすることほど簡単なことはないって。 でも、破瓜の痛みは...痛くないかな？私のか細い声でもしかして起こされたりしないよね？ こんな時、口にハンカチをくわえれば大丈夫って言われたから持ってきたけど....。


くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ


期待、もしかしたら躊躇と恐れを抱いた細い手で握りしめる手前味噌。勇者様の視線が自分に向けられないたびに、こっそりと、自分でもこっそりと決意するような臆病な行動を漏らす。


"信じられないでしょうね、階級社会に慣れ親しんでいるあなたにとって、王と市民が平等であるとは思えないでしょう？"

"おっしゃる通り、信じられませんが、勇者様のお言葉ですから、嘘ではないのでしょう。 だから余計に興味深いですよ。 果たして国王陛下と平民が平等、ふふっ......！。"


たとえ寝酒を飲みに来たとはいえ、初日の夜を過ごすという考えが思考を支配して、思わず口にしてはいけない意見を口にしてしまったようで、慌てて口止めする口元。まさか勇者様の部屋を誰かが覗き見しているとは想像しにくかったが、気をつけておいて損はないだろうということで、不器用な演技に夢中で、本当におバカなことをしようとした自分の口を制止した。


"うーん、どうしたんですか？"

"あ、いえ。私が無知で軽率な言葉を吐きそうになったんです。 ただ、失言でした。どうか忘れてください...！。"


同時にひざまずき、頭を床に突きつけるように下げた。

もちろん完全に届かないので、情けなく見えるようにするため、こんな感じですが。


"誰にも言わないから早く起きてください！ 私は大丈夫だから......！。"


おかげさまで、勇者さんが手際よく私の肩と手を握って起こしてくれました。


"あまり心配しないでください。むしろ私こそごめんなさい。お互いの文化が違うので、私があまりに無遠慮なことを言ってしまったようです。"

"あ、いえいえ！勇者様のせいではなく、無知な私が...！。"

"シーッ。"


哀れな境遇に陥って同情を誘発しようとした瞬間、唇に無造作に触れた勇者様の人差し指。


"あまり自分を責めないでね、あなたは何も悪くないんだから。 それとも、耳でも閉じた方がいいのかな？"


続いて魅惑的な中低音でなだめながら私の耳を塞いで、驚かないでくださいと、とろけるような目笑いを浮かべられるとめまいがする。


"あ、はいはい...."


どうしてこんなに上手いんだろう。

撫でるのが上手いので、一瞬惚れ惚れしてしまい、勇者様の尊い眼差しだけが瞳いっぱいになりました。


"私は部外者だから平気なんだよ、そういう体制が当たり前だと思って生きてきたから、こういう話は困惑するしかないんだよ。 だから、この話は聞いてないことにしましょうね、わかったね？"


重厚な男性が困った女性のために、陽気な表情で優しく慰めてくれて。


 ...これは子供の頃の童話でも見たことない。


"はい。あ、はい。そうですね...."


そろそろ落ち着いてきたところで、そっと距離を置かれてしまい、とても寂しさがこみ上げてくる。


 あらあら、誘惑しに来たのに、誘惑されちゃうなんて......！ あー、こんなことしちゃいけないのに....。


直ぐに目的を思い出すと、火照った顔を手拍子で軽く叩いて落ち着かせた。


"もしかしてお茶でも飲みますか？"

"えっ！ あ！ えっ...！ ああっ？えっ...！？"


このまま見つめていると顔を真っ赤にする恥ずかしさが露わになりそうなので、思わず差し出された茶碗を受け取ろうとしたところで、慌てて断った。


"いや、勇者様が勧めてくださった、それも先に飲んだ杯に唇をつけるという事実がとても嬉しいのですが、また卑しい私が敢えてしてもいいのかどうか、とても不安で...."

"わあああ、落ち着きなさい、落ち着きなさい。また唇を塞ぐ必要があるのかしら？"

"ふへへ......？"


再び唇に手を添える音に、期待が膨らみます。


"息をしてください、息をしてください。"


そう言って、意外にも勇者様の手が触れたのは唇ではなかった。


"はい、はいっ......！ はふっふっふ。はっ、ふふふ...."


さらに困ったことに唇ではなく、鼻の穴。親指と人差し指で鼻の背骨を掴んで鼻呼吸を不可能にして、息を吸うようにアドバイスする。


"どうですか、これでも落ち着かないんですか、それじゃあ困りますよ？ そんなふうに発作的に声を荒げていると。私、困りますか？"


ギュッ


 あ、ああ、ああ...！ そんなに重厚な顔で言われると、私、本当に....。


'タルソク'


"再、喚きますよ...."


落ち着くのが難しい精神なので、ここは無条件に謝るのが精一杯だった。

 

 

 

 

 

この小説は宣伝目的で書かれたものです。
この文章はdeeplが翻訳しました。